そして、クラークにはもう一つの顔があった。

いや、使命と言ってもよかった。

クラークは、ジャスティンを凝視した。

(特異点を見張れ)

それが、クラークに課せられた任務であった。

特異点とは、一般的な基準があったとして、その基準が当てはまらないもののことをいう。

人間なのに、それ以上の力を持つ者。

つまり、そこからはみ出した者のことを指していた。

十字軍は、特異点として…ティアナ・アートウッドを認定しており…さらに、ジャスティン・ゲイにも、その可能性を危惧していた。


しかし、実際的なる特異点は、人間と魔王の子であるライこそが、相応しく…さらに、のちに生まれるアルテミアもまた、特異点としての存在意義を持っていた。

ティアナもジャスティンも、人のレベルを越えた強さを持っているが、パーソナリティは人間であった。

人間である。そこから、はみ出したり、外れた訳ではない。

それならば、クラークもまた…特異点として認識されなければならないが、彼には実験体としての一面があった為に、それほど危険視はされていなかった。

(特異点が、人間の為に戦うならばよいが…それ以外ならば…)

クラークに命令を下した人物の言葉を、思い出していた。

(抹殺せよ!やつらは、魔物よりも危険だ。人類という種の根幹に関わることだ)

その人物は、のちの安定者になる。

そして、彼らのその考えが、ティアナ・アートウッド抹殺へと繋がっていくことになる。

だが、それは数年後のこと。

今は、まだマジックショックの初期段階であり、十字軍も特異点にかかりきりになっている暇はなかったのだ。

ティアナが提示した…カードシステムの実現もされていない。

まだ時代は、ティアナを必要としていた。

そして、彼女も…ジャスティンも、これから起こる激動の運命を知るはずもなかった。

ただ…人々の為に戦う。

その思いだけで、真っ直ぐに突き進んでいるだけだった。