だから、この地に来たのは…ジャスティンとクラークの2人だけだった。

彼らも一応は、十字軍に在籍していたが、まだ少年部隊の所属であり、正式には入隊していなかった。

それでも、彼ら2人の名を知らぬ者は、十字軍にはいない。

十字軍付属の士官学校では、つねにトップの成績を誇るクラーク。

そのクラークに、成績で並ぶだけではなく…格闘術ならば、士官学校で無敵を誇るジャスティン。

2人は別格だったが、問題児でもあった。

特に、ジャスティンには、問題があった。 彼は極力…魔法を使わなかったのだ。

あくまでも、素手で戦うことへの拘りは凄まじく…魔法を使って、相手を倒していく模擬戦で、一切魔法を使わずに、優勝したのだ。

しかし、クラークだけは知っていた。

本当は、魔法のエキスパートであることを。

何度か魔物と遭遇して、戦った時…その魔物が、魔神レベルだった場合、ジャスティンは何度か、魔法を使っていた。

それで勝ったとしても、彼は喜ばなかった。ただ己を恥じた。そして、さらに鍛え、つねに自らのレベルを上げていった。

いつの頃か、甘えになると言って、妖精との契約を解除した。

今は、ほぼ魔法を使えない。それなのに、そばにいるだけで安心させる強さを、ジャスティンは手に入れつつあった。

クラークは、砂に手を合わせるジャスティンをじっと見つめていた。

一方、クラークはと言うと、決して人前では見せない特殊能力を持っていた。

自らでは、魔力を発生することのできない人間でありながら、魔力を使わない特殊能力を持つことは、素晴らしいことである。しかし、クラークは決して見せることはしなかった。

成績で目立つクラークである。それ以上の能力を持っていると悟られれば、人々は嫉妬以上の感情を持つことになるであろう。

じわじわと、魔王によって…魔法が使えなくなって来ているからだ。

クラークの特殊能力に関しては、十字軍の一部の上の者しか、その事実を知らない。