橋を渡り切っても、王宮には入口がない。

その中にいる聖霊達を逃がさない為でもあるが、浸入者を防ぐ為でもあった。

ゲイルが王宮の壁に手を触れると、空間が裂け…入口ができた。

中に入ると、ゲイル達は遺体が横たわる…神の寝室と言われるピラミッド型の王宮の中心に向かわずに、最下層を目指した。

聖霊や妖精が、閉じ込められたフロアよりもさらに下。

そこには、小さな部屋があった。

金ではなく…単なる石でできた部屋。

ゲイルは、鉄の扉をノックした。

暖がない為、扉は叩くだけでも冷たかった。

「失礼しますよ。巫女殿」

ゲイルは扉を開けると、ローソクの光だけに照らされた部屋に入った。

その部屋には、さらに部屋があった。

いや、それは部屋ではない。檻だ。

「いや…。もう今日からは、こう言うべきですね」

ゲイルは、檻の中で木製の粗末な椅子に腰かけている少女に、笑いかけた。

「人神様と…」

深々と頭を下げたゲイルを、少女は見ようともしない。

ゲイルは頭を上げると、服から鍵を取りだした。

「さあ〜!今日から、あなたは神です!人類で一番、偉い存在になるのです」

檻を開けると、少女に手を差し伸べた。

「参りましょう。アスカ・シャーウッド様」