(さっきのは一体…)

生徒会長としての職務を終え、正門までの道を帰る九鬼は、タキシードの男とのファーストコンタクトについて考えていた。

(そして、異世界…ブルーワールドとは?)

考えても、仕方がない。

九鬼はそう思い直した。

大体…自分も、月の力というあり得ないものを使っているのだ。

異世界があっても、否定できない。

(しかし…どうやって、異世界から来る敵を阻止できる?)

思考する内容が変わった時、九鬼の前に、1人の男が現れて道をふさいだ。

「里奈は、一緒ではないようだね。好都合だ」

「結城…先生」

九鬼は、足を止めた。目の前に立つ男の名は、結城哲也。乙女レッド…結城里奈の兄であった。

そして、乙女ダイヤモンドの力を得ていた。

女しか扱えないはずの…月影の力を、無理矢理使っている為に…ついに体に変化が現れてきた哲也は、最近では滅多に変身はしない。

闇との戦いの中、考え方の相違で…何度か激突していた。

彼は、闇を人間の一部と考え、無闇に排除することをよしとしなかった。

その為、闇の側に立ち…九鬼や自らの妹である里奈とも対立した。


しかし、闇と言われる存在である彼ら自身は、自らを人間の一部と考えず、人間よりも進化し…優れた者であると定義していた。

そして、旧タイプの人間である今の人類を排除しょうとしていることを…哲也は知った。

高校の先輩であり、野球部だった山根に騙され、九鬼達と戦ったが、真実を知った哲也は…彼らから離れた。

何とか山根達を説得しょうともしたが、無駄だった。

本意ではないが、乙女ダイヤモンドの力で抑えつけようした時…哲也は、自分が傀儡であったことを知った。

彼らの神が、目覚めるまでの操り人形であったことを。

乙女ダイヤモンドに変身した哲也は、テラと言われる…彼らの女神の圧倒的な力に敗退した。

それも、目覚めたばかりで、まだ混乱しているテラにだ。

命からがら逃げ帰った哲也は、兜博士に保護された。

ほとんど何も教えられていなかった哲也は、兜の説明と自らの体験を合わせることで、真実の一部を知ったのだ。