「あ、はい」

慌てて振り向いた男の顔を見て、カレンは腕を組んだ。

おぼこい顔である。

ますます1人で、ここにいる意味がわからなかった。

「あたしに…話って何ですか?それに、あなたはなぜここにいるんですか?」

カレンの質問に、男は一度唾を飲み込むと、

「最近…この辺りで、魔物の死骸が増えました。魔物の中には、共食いをするものも多く…魔物の死骸が、ここまで残っていることはありません 」

男は真っ直ぐに、カレンを見つめ、

「だとすれば…魔物が処理するよりも速く、信じられない数の魔物を倒している者がいるはず…」

一旦、言葉を止めた。

カレンは息を吐くと、

「それが、あたしだったと?」

「ええ…」

男はため息をついた。

「?」

カレンには、そのため息の理由がわからなかった。

しかし、すぐに知ることになった。

男は話を続けた。

「最初は、噂の勇者…赤星浩一さんか…伝説の戦士…ジャスティン・ゲイ様かと思ったのですが…」

ここで、今日一番大きなため息をついた。

「あたしと同じ…女の人だなんて…」



「え」

カレンは目を見開いた。

(お、女…)

そう言われて、改めて見たらそう見えた。

あまりの化粧気のなさと、作業服のような服装が、男…というより、男の子に見せていた。


「失礼ですけど…本当に、あなたが?」

半信半疑になってきた女に、カレンは叫んだ。


「伏せろ!」


「え!」

女はカレンの迫力に、思わずしゃがみ込んだ。

カレンの手には、いつのまにかピュアハートと言われる剣が握られていた。

カレンはピュアハートを横凪に振るいながら、回転した。

先程まで洗濯をしていた泉の表面に、波紋が走った。

「うぎゃああ!」

泉を囲む茂みや、木々の後ろから悲鳴がした。

それも一つや二つではない。

何本か木々が倒れると、その向こうから…隠れていた魔物達が姿を見せた。

その瞬間、魔物達の体に線が走ると、そこから鮮血を噴き出した。