あたしは、あの日…戦う決意をした。



「中島!」

平穏な日々を壊す…存在。

あんなやつらが、この世界にいたなんて…。


「中島裕。君を迎えに来ました」

異形の者に囲まれた中島を守る為に、あたしは走った。

人目のつかない路地裏の狭い道を、ただがむしゃらに。

どうして、走れたのかは…わからない。

化け物の群れに、恐れることなく立ち向かえたのは、わからない。

ただ…連れ去られようとする中島の背中が、記憶の底にある何かと重なった。

(行かないで… XX!)

あの時、止めていれば…後悔はしなかったはず。

(後悔…?)

あたしは走りながら、今のあたしと意識の裏に、もう1人の自分がいるような気がした。

(何?)

だけど、あたしは…それ以上考えなかった。

そんな暇はなかったからだ。

中島に駆け寄るあたしの前に、数人の化け物が立ちふさがった。

「見られたからには、殺せ」

リーダーと思われるサングラスをかけた男が、周りの化け物に命じた。

「よろしいな?」

その後、小声で中島に囁いた。

「…」

中島の反応はなかった。

「ケエエエ!」

奇声を発しながら、あたしに向かってくる化け物達。

「どけ!」

それでも、あたしは怯むことはなかった。

化け物の牙や鋭い爪が迫った時も、恐怖を感じることはなかった。


(そうよ〜。あなたのようなお方が、このようなもの達を恐れる理由がない)

心の中の自分の声が、あたしに告げた。

(さあ〜邪魔な蛆虫どもに…月の制裁を与えてやるのよ)

「来い!」

あたしは、無意識に月に向かって、右手を上げていた。

すると、月の光の中から何かが飛んできた。

あたしの手に収まる前に、その光は襲いかかってきた化け物達を蹴散らした。

「な!」

絶句するサングラスの男の目に、光を掴んだあたしの姿が映る。


「装着!」

プラチナの輝きが、あたしを包み…あたしの姿を変えた。

乙女プラチナに。