その言葉を聞いた瞬間、アルテミアは絵里を蹴り離した。

「きゃあ!」

また尻餅をつく絵里を、アルテミアは見下ろし、

「人間が、姿形で差別する動物であることは…理解している!だけどな!共にいようとする相手を、化け物だと言うな!」

睨み付けた。

「な、何よ!」

絵里は立ち上がると、アルテミアを指差し、

「あんたも化け物じゃない!どんなに綺麗でも!そ、それに!わたしにも、女神のような力があれば!生きていけるわ!こんな姿になってもね!」

「力が…あれば…だと?」

アルテミアは眉を寄せた。

「そうよ!だけど、わたしにはない!だから、赤星君が必要なの!生きる為に!」




「クズが…」

絵里の言葉を噛み締めた後、アルテミアは小声で唸るように言った。

「え」

アルテミアから立ち昇る魔力に、絵里は言葉を止めた。

「や、やめろ!アルテミア!」

ヤバいと思い、止めようと声に出したが、アルテミアは止めなかった。

槍の一撃が、雷鳴とともに…絵里の体に叩き込まれた。



一瞬だった。


全身の体液が蒸発した絵里が、地面に転がっていた。

「赤星君…」

アルテミアから変わった僕が、そばに立っていた。

絵里は、僕に笑顔を向け、

「ありがとう…」

お礼を言った。

「え」

意味がわからなかった。

僕は片膝を地面につけ、絵里に顔を近づけた。

笑顔の絵里は、あの頃の絵里だった。

「あなたが去ってから…世界は…新しい神をつくった。その神は、人間を見捨てたの。自分も見捨てられた深い…悲しみから」

「見捨てられた…悲しみ?」

僕の言葉に、絵里はとても悲しげな目を向け、

「…だから、神は…次にこの世界を生きる新しい人間に代わるものとして…わたしのような人間が持っている遺伝子を…」

「そ、それって!」

「…」

絵里は、無言で頷いた。