「アルテミア…」

ジャスティンが最後に会ったのは、自分とともに魔王にやられた時である。

いつも自信と強さに溢れていた少女が、魔王の一撃で倒された姿を…ジャスティンは目にしていた。

「だとすれば、彼女と…融合すれば…赤星君は復活できるのでは?」

ジャスティンは、2人でモード・チェンジしていた姿を思い出していた。

しかし、なぜだろうか…今、自分で言った考えを否定したくなった。

アルテミアとともに、アステカ王国から脱出した時の…彼女の表情を思い出すと、すべてが否定的になってしまう。

何とも言えない表情に、ジャスティンは心を読むことができなかった。


それは、魔王の子を産み…人類の裏切り者と言われたティアナの最後に見た表情に似ていた。

(俺は…彼女達の悲しみを…決意もいつも理解できない。あとになって、結果として知るだけだ)


そんなジャスティンの葛藤を見抜いたのか…カイオウは再び海を見た。

「アルテミア様のお考えは、わからんよ。だが、今…我らの間で話題になっておることは、ご存知かな?」


「え、ええ…」

ジャスティンは一旦、気持ちを切り替えた。

「アルテミアと赤星浩一君の間にできた…赤ん坊のことですね」

「そうじゃ」

カイオウは再び、海を睨んだ。

だけど、今度は気を放つことはしない。

「新たな…人類にとっての希望となるでしょ」

「果たして、そうかな?」

カイオウは目を細めた。

「え?」

「貴殿は今、赤ん坊と言ったが…その子が、大きくなっているのをご存知かな?我らの兵士と戦える程に」

「馬鹿な!あり得ない!」

ジャスティンは思わず、大声を上げた。

「我らの一個小隊を全滅させただけではなく…魔神をも倒した。それも、かつての炎の女神の武器を使って!」

「な!」

ジャスティンは絶句した。

「この事実は、魔王軍の中でも、隠蔽されておる。何者かによってな」

カイオウは、ジャスティンに顔を向けた。