「ここのはずだ!」

蹴り開けられている理事長室に飛び込んだユウリとアイリの目に、机の上で横になって気を失っている黒谷理事長の姿が目に入った。

しかし、二人は黒谷を気にすることなく、理事長室を見回した。

「どこかに…空間を繋ぐ入口が」

辺りを探すアイリと違い、ユウリは真っ直ぐに机の向こうに向う。

窓に手を当て、

「入口が…閉じられている」

「何だと!?」

アイリも窓に顔を向けると、そばに行こうとした。

その瞬間、足元の床が輝いた。

「な!」

アイリのつま先から数センチ向こうの床から飛び出した鋭い剣先が、床そのものではなく、床のある空間を切り裂いていく。

まるで、チャックでもついていたのかと思うくらい…空間に穴が開くと、そこから黄金に輝く天使が飛び出して来た。

「アルテミア!」

アイリとユウリが、同時に叫んだ。

「…」

アルテミアは無言で変身を解くと、六枚の翼が消えた。

「やはり!ここにいたのか!」

目の前に立つアルテミアに、アイリが襲いかかる。

次の瞬間、赤いジャケットを羽織ったアルテミアの拳が、アイリの腹に叩き込まれた。

「アイリ!」

机を飛び越えて、ユウリがアルテミアの後ろから飛びかかる。

「フン!」

気合いとともに身をよじり、アルテミアは回し蹴りでユウリをふっ飛ばした。

ユウリの体は、窓のぶつかった。

ガラスにヒビが入り、異空間に入口だった窓は完全に砕けた。

「ば.馬鹿な…」

窓からずり落ちたユウリが呟いた。

「炎の魔神である私が…熱いなど」

蹴りがヒットした部分が、燃えていた。