「うげえ!」

体をくの字に曲げた少女の体に、再び拳を叩き込もうとしたアルテミアは、突然ふっ飛んだ。

「き、貴様!」

少女の両目が輝き、アルテミアを超能力でふっ飛ばすとすぐに、手から光線が放たれた。

「クッ」

アルテミアは顔をしかめながらも、横に飛んで避けた。

「魔力を使えない貴様などに!」

少女の叫びに反応して、光線が曲がった。

「やはりな!相手の魔力を封じる絶対結界!その中で、魔力を使えるのは己だけ!」

アルテミアは空雷牙を使った時、少女の周りだけ…雷鳴が届いていないことに気づいていた。

「この能力の前では、貴様も無力!」

光線は、アルテミアを直撃するはずだった。

「どうかな?」

アルテミアは着地と同時に、光線に向かって飛んだ。

「自ら死ぬ気か!」

「フン!」

アルテミアが右手を振ると、ドラゴンキラーが装着された。

「月の女神が、なぜ貴様を封印するために、人間を使ったのか!そこに理由がある!」

アルテミアは、光線をドラゴンキラーで切り裂いた。

「な!」

目を見開く少女に、ドラゴンキラーを突きだしながら、アルテミアは突進する。

「魔力がなくても、人間は戦える!恐れぬ勇気さえあれば!」

「く!」

次々に光線を放つが、アルテミアはすべて切り裂いた。

「ば、馬鹿な!」

アルテミアの姿を見て、少女の目に…過去の情景が浮かんだ。

絶対結界により、月の力も使えなくなったのに、生身で向かってくる人間達。

何百人と殺そうと、屍を越えて…ついには、少女は人間達に抑えつけられた。

身動きできない少女の目に、天から向かってくる人間の姿が映る。

(月影キック!)



「うわあああ!」

次の瞬間、少女は絶叫し…今までで一番威力のある光を放った。

その光は、アルテミアを直撃した…はずだった。


「うぐぅ」

勝利の確証の笑みを浮かべていた少女の口から、血が溢れた。

「貴様は…な、何者だ?」

後ろに回ったアルテミアが背中から、心臓を突き刺していた。

「ティアナ・アートウッドの娘…アルテミア・アートウッドだ!」