「こいつは…」

ユウリが、九鬼を軽く睨んだ。

「やめておけ。今は、大人しくしていろ」

アイリは九鬼を見つめながら、ユウリに注意した。


そんな2人を見つめながら、九鬼はゆっくりと近付いて来た。

「この学校は、髪を染めることは禁止されています。できれば、明日までに黒に染め直して下さい」


「へぇ〜」

九鬼の言葉に、ユウリが笑った。

「人間如きが、私達に命令するか」

殺気を放とうとするユウリを制するように、アイリが一歩前に出た。

「すいませんが…私達の髪の色は、生まれつきです。この色に染めている訳では、ございません」

アイリの物言いに、九鬼は2人の髪を見た。

まるで、作り物のような質感が見て取れた。

染めて傷んでいるように、遠くから見えたが…違うようだ。

(触らなければ…わからないが…)

九鬼は、髪から視線を外し、

(髪ではないような感じがする)

2人の顔を見た。

カツラなどではない。なぜならば、制服から見える肌の質感も、人間とは違うように感じた。

(彼女達は、何者だ?)

九鬼は周囲の生徒達に気を使いながら、自然体で身構えた。

「うん?」

九鬼の体の微妙な変化に、ユウリとアイリは気づいた。

少し嬉しそうな顔をするユウリに気付き、アイリは小さく舌打ちをした。

(できれば…隠密にやりたかったが…)

その場で、少し暴れることを覚悟した。

(魔力は使わずに、一撃で死なない程度にやるか)

ユウリとアイリも、身構えようとした。

その時、

九鬼との間に、誰かが飛び込んできた。

「髪の色くらいで、とやかく言うな」

日本刀に酷似した刀が、いつのまにか九鬼の首筋に差し込まれていた。

「十夜さん!?」

驚く九鬼に、十夜小百合はにやりと笑いかけた。

「久しぶりだな」

短い金髪に、なぜか1人セーラー服という出で立ちの十夜は、九鬼に言った。

「転校生の髪型を注意する暇があったら…」

十夜は日本刀を、九鬼の首筋に当てた。

「おれと戦え」