「まったく、どうしてなんだ」

「文句を言うな」

「私達は、このような場所に通う為に、生まれたのではないぞ」

大月学園内を闊歩する2人の女生徒に、周囲の視線が集中する。

まるで、人形のように細くバランスの取れた体に金髪の姿は、人々の注目を得るのに十分だった。

しかし、一番目をひかれたのが…その顔だった。

まったく同じ顔と、まったく同じ体の女生徒が、歩いているのである。

違いは、髪型だけ。

双子と言われても、ここまで同じであることはあり得なかった。

まるで、量産された人形のように、同じ型でつくれたものに見えた。

「仕方あるまい…。これも、リンネ様のご命令なのだから」

「それは、わかっている」

2人の女生徒の正体は、ツインテールのユウリとポニーテールのアイリ。

炎の騎士団長リンネの側近であった。

「わざわざ潜入などせずとも、制圧すればいいだろうが」

ユウリの言葉に、アイリは目で周囲を伺いながら、

「そうもいくまいて…ここには、アルテミアも潜入しているはず。それに、赤の王もな」

「信じられん」

ユウリは、道を開けて2人を見送る生徒達に顔を向け、微笑んだ。

それだけで、男子生徒から歓声が上がった。

「媚びを売るな」

アイリの注意に、

「面白いではないか。虫が鳴いていると思えばな」

ユウリは前を向き、前方を睨んだ。

「しかし…あの赤の王が、復活したとは思えんのだが…」

「全滅した討伐部隊から送られた最後の思念には、赤の王への恐怖が刻まれていた」

「しかしな…それだけで…。うん?」

考え込もうとしたユウリは、人混みから廊下の真ん中に飛び出してきた女生徒に、目を細めた。

アイリも、その女生徒に気付き、足を止めた。

女生徒は、ゆっくりと2人に近付いて来る。

廊下に集まっていた男子生徒達がざわめき、教室に入ったりして、その場から消えていく。


「あなた方は、転校生ですね」

近付いて来たのは、九鬼だった。