声のトーンで、ジャスティンが笑っていることに気付いたカレンは、少しカチンときて声を荒げた。

「こ、こっちは、真剣に話しているんですよ!」


「わかっているよ」

あくまでも冷静に対応するジャスティン。

それは、妙に恥ずかしくて、カレンは話を戻そうとした。

「だから、浩也をこの学校に!」
「すまない。後で、電話するよ」

カレンの話の途中だが、ジャスティンは通信を切った。


「いいのか?話の途中だったが」

「構いませんよ」

ジャスティンは、ブラックカードを中指と人差し指で挟むと、目の前に立つ黒い影を見上げ、

「あなたを待たす程…俺は、恐いもの知らずではありませんので」

深々と頭を下げた。

「そうかな?我には、そう見えぬがな」

ジャスティンを見下ろす眼光が、鋭い。

普通の人間…いや、並みの魔物なら、その目力だけで死んでいるだろう。

二本の角に、赤い髪…屈強な体躯は熊を思わせたが、どこか気品の高い美しさを漂わせていた。


「…で、俺に何の用ですかな?」

ジャスティンは、両手を下にたらすと、ノーカードの体勢になった。

「天空の騎士団長…サラ」

体からは無駄な力が消えたが、見上げるジャスティンの瞳は力強い。

「フッ」

サラは笑うと、腕を組んだ。

「相変わらず…喰えぬ男よ」

サラとジャスティンの視線が、絡み合う。

「長きにわたる貴様との決着をつけたいところではあるが…」

サラは腕を組んだまま反転し、無防備な背中をジャスティンに晒した。

「今回は、違う!」

そして、振り向くと…ジャスティンの顔を見た。

「貴様にききたいことがある!」

ジャスティンも息を吐くと、腕を組んだ。

「それは、どっちですか?」

サラは、見上げる瞳を睨み付け、

「どっちもだ」

とこたえた。

「そうですか…」

ジャスティンは一度目を瞑ると、ゆっくりと開けた。

サラの視線から、逃げることなく…ジャスティンは頷いた。

「了解しました」