「…」

玉座の間に、独り残ったリンネは、主のいない席に座り…足を組んだ。

別に、王になりたい訳ではない。

いつも、ここに座っていたライの孤独を知っていたからだ。

頂点にいるものは、いつでも孤独である。

王がいない城で、リンネと対等に話せるのは、三人の騎士団長である。

しかし、サラやギラとはそりが合わなかった。

カイオウは、どこか悟りを開いたような落ち着きがあり、普通に話す存在でもない。

「…孤独…」

そう呟いてみたリンネの脳裏に、2人の顔が浮かんだ。

1人は、沙知絵。

人間ではなくなり、愛する人間の記憶を失ったが…それでも、無意識に愛する男の盾になり、死んだ女。


そして、もう1人は…。



「ご報告致します」


玉座に座るリンネの前に、2つの火が灯ると、2人の魔神になった。

ツインテールのユウリと、ポニーテールのアイリ。


「何だ?申してみろ」

リンネは、すぐに控える2人に目を細めた。

「は!」

2人は深々と頭を下げた後、ツインテールのユウリが話しだした。

「南米のアマゾン川近くで、魔神ダダが、魔王の鍵と遭遇!ドラゴンナイトの群れを使い、追い詰めましたが、鍵を護る魔物に妨害され…全滅しました」

「…」

リンネは玉座にもたれ、無表情を装っていた。

ユウリはリンネの息遣いに注意しながら、言葉を続けた。

「その妨害した魔物というのが…」

「それは、よい」

リンネは、ユウリの言葉を遮った。

「リンネ様!?」

思わず顔を上げたユウリの目に、炎の魔神とは思えぬ程の冷ややかな目をしたリンネの顔が映った。

しかし、その目は…ユウリを見ていない。

息を詰まらしたユウリに代わり、隣で控えていたアイリが話しだした。

「しかし…その者は、あやつではないと思います。一度、死んだ魔物を蘇らすことは、不可能です。魔王の力がなければ…」