巨大な魔力のぶつかりが、城を震わしていた。

低級魔物達は、あちこちで震えていた。

城の中で待機していた魔神達も、各々な反応を示していたが、僕の魔力を感じて凍りついていた。

「赤の王!」

1人の魔神の叫びが、城内を震撼させた。

しかし、誰も騒がない。

なぜならば…王同士の戦いだからだ。

ただ…息を飲み、成り行きに任せるだけだ。




「くそ!」

毒づきながらも、僕はまったく景色の変わらない廊下を走っていた。

「くそ!くそ!」

そんなことを言いながらも、僕の足は玉座の間に向かっていた。

まるで、惹き付けられるように。

来たことのない回廊を走り、立ち止まった先は石の扉だった。

そこを開けた瞬間、僕は思い出した。

この場所を。

(ここは…)

僕の頭の中に、西園寺の最後とレイナの涙がよみがえる。

「久しいな。人間の少年よ」

「!?」

闇に覆われた玉座の間。その中心に座るのは…ライでなかった。

「バイラ!?」

目を見開く僕に、バイラは笑った。

すると、バイラの姿は闇と同化して消えた。

「!?」

絶句した僕が、玉座に近付こうとしたら、後ろから声がした。

「どうした?赤の王よ」

「!?」

驚き、振り返ると…玉座に座るライがいた。

いつのまにか、僕はくぐったばかりの扉の前にいた。

どうやら、空間が歪んでいるらしい。

「ク!」

僕は顔をしかめると、魔力を発動させた。赤く輝く瞳が、闇の中にいるライをとらえた。もう惑わされることはない。

と思った瞬間、ライは目の前に立っていた。

(いつのまにか!?)

驚く僕の目ではなく、ライの視線は下を向いていた。

「王パーツか…」

「!?」

確かに、僕の腰にオウパーツがついてあった。

「そのようなもの…」

ライの指先が、動いた。

すると、腰のオウパーツは真っ二つになり、床に落ち…闇の中に消えていた。

「無用」

呟くように言ったライの拳が、零距離から…僕の腹に突き刺さった。

いや、突き刺さらなかった。