「では、御免」

顔を下げて、玉座の間から消えたカイオウ。

その様子を、無言で聞いていたライ。

カイオウがいなくなっても続く静寂に堪えられずに、玉座の横にいた蛙男が口を開いた。

「せ、折角…お造りになられた人間もどきが、全滅なさったようで…」

「…」

ライはこたえない。

「し、しかし!あの者達は、簡単に造れ…」

「人間もどきではない」

冷や汗を流しながら、話す蛙男の心臓が、ライの一言で一瞬動きを止めた。

「は!」

言葉がでない蛙男を見ずに、ライはカイオウがいた空間を見つめながら、

「やつらは、人間として造った。新たな人間としてな」

ゆっくりを左手を前に出した。

すると、手のひらの上に、女の形をした粘土細工のようなものができたが…ライは握り潰した。

「やはり…人間は不要。人間とつくものは、この世界に不要だ」

そして、ゆっくりと玉座から立ち上がると、

「すべて滅するだけだ」

ライの瞳が、赤く光った。

その魔力を感じ、蛙男は思わず土下座をしていた。

「行くぞ」

そのままテレポートしょうとするライの耳に、サラの声が飛び込んで来た。

「お待ち下さい」

玉座の間に姿を見せたサラは、ライの前で跪くと、頭を下げ、

「アルテミア様が、こちらに向かっているという情報が飛び込んで来ています。さらに、少々厄介な人間もこちらに向かっております」

「アルテミアが!?」

サラの言葉に、ライは再び座り直した。

「はい」

サラの報告に、ライはにやりと笑った。

「よかろう」

それから頷き、サラを見下ろすと、

「お前の望み通り、待ってやろう。しかし、これが最後になるがな」

「ありがとうございます」

サラは深々と頭を下げた。

「フン」

そんなサラに、ライは鼻を鳴らした。

「では…失礼します」

サラはライを見ることなく、頭を下げたまま、玉座の間から姿を消した。

「アルテミア様が来ると!?」

驚く蛙男に、ライは一言だけ言った。

「心配するな。勝負は一瞬だ。城を破壊する暇もないだろう」