「やはり…こやつらこそが、癌細胞よのう」

「!?」

焦っていた女は、真後ろから声がして驚き、慌てて振り返った。

そこに立っていたのは…。

女は目を見開き、

「カイオウ!」

驚きの声を上げた。

「やはり…こやつらは、この世界の生態系を崩す」

カイオウは目だけで、周囲を確認し、

「人間を喰らい尽くした後には、魔物達も襲うだろう」

ゆっくりと目を細めた。

「騎士団長であるお前が、なぜここにいる!」

女はカイオウを指差し、睨み付けた。

「…」

カイオウは女の質問には答えずに、手に持っていた鞘からゆっくりと剣を抜き取った。

日本刀に似た研ぎ澄まされた刀身が、妖しく輝いた。

「貴様!」

女はカイオウの殺気を感じ、無意識に一歩下がった。

「こ、これは!王の…い、いや!神の命令よ」

女の声が少し、震えていた。

「他の魔神は、王に造られた。しかし、我は違う!」
カイオウは、鞘を地面に突き刺した。

「謀反か!」

女は叫んだ。

「生まれたばかりなのに…難しい言葉を知ってるな」

カイオウは口許に、うっすらと笑みを浮かべた。

「く!な、舐めるな!」

女は目を吊り上げると、周りの人間もどきに命じた。

「お前達!裏切り者を殺せ!」

「フッ」

カイオウは笑った。そして、襲いかかってきた人間もどき達を細切れにした。

「おのれえ〜!」

それを見ていた人間もどき達の姿が、変わる。

カイオウそっくりになり、日本刀も爪の細胞を変化させて造り出す。

数十人のカイオウもどきが一斉に、襲いかかった。

しかし、返り討ちにあった。

「無駄だ。例え姿形を似せても…切れ味は真似られない。それにだ」

カイオウは、目線を下に下げた。

細切れになった肉片が蠢いて、くっ付こうとしていた。

しかし、なぜか…融合できない。

カイオウは、肉片に刀を突き刺し、

「斬った部分の細胞を破壊した」

視線を女に向けた。

「お前達は、本物ではない。粘土細工で造られた紛い物」

そして、口許を緩め

「決して本物にはなれない」

刀を女に向けて、突きだした。