すべては、無に帰る。

しかし、無に帰っても人々はそこに…新たな生を願う。

死後の世界、蘇り等。

天国と地獄。

人は死んでもなお、生を願うのか。

はたまた…今、生きている世界から逃れたいのか。

そう…生きることは決して、幸せではない。

しかし、生きれることは幸せであろう。

自らの足で進める自由と意志があるならば、困難も結果として死を迎えたとしても、幸せかもしれない。



「は、は、は、は」

実世界でいう朝鮮半島を越えたカレンは、巨大な石の上で横になっていた。

この先は、魔界の最深部になる。周りに横たわる無数の死骸よりも、カレンは今までの過去を思い出していた。

いや、過去というよりも今まで歩んで来た道を。

そして、これから進むべき先を。

「まったく…ここの方が空が綺麗とは、どういうことだ」

弱肉強食。

人などが簡単には入れない世界では、生きるということが難しい。

魔物同士でも、生きる為に殺し合う。

そんな世界を包むように、自然はただ悠然と広がっていた。

この自然を壊す者はいない。

そんな暇はないからだ。

「いくか」

カレンは起き上がった。

星空はたまに、見上げればいい。

見とれている場合ではなかった。

疲れは癒えていた。

澄んだ空気も心地よい。

魔物の血の匂いも、気にはならない。

それよりも、岩の周囲からもれる殺気が、カレンの肌を刺激した。

「…雑魚か」

カレンは岩から飛び降りると、胸にかけたペンダントからピュアハートを抜き取った。

「できれば…魔神クラスと戦いたかったが」

周囲に潜む魔物のレベルを感じ取ったカレンは、軽くため息をつくと、

「まあ〜贅沢は言えないな」

一瞬で岩から離れ、茂みの中で身を潜めていた魔物の一匹にピュアハートを突き刺した。

「すべてを倒して進む!それだけだ」

魔物が断末魔の声を出す前に、カレンは次の獲物に襲いかかっていた。

その動きを察知して、数十匹の魔物が姿を隠すのをやめて、行動を起こした。

再び静かだった森が、ざわめきだした。