「!?」

慌てて振り向くと、男と女は並んで立っていた。

女はにこっと僕に笑いかけると、口を開いた。

「あたし達では、あなたを倒せない。だから…」

女は、真っ直ぐに僕を見つめ、

「あなたを愛することにしたわ」

妖しく瞳をうるわした。

「!」

絶句する僕を見つめながら、女はゆっくりと背を向けた。

そして、立ち去ろうとする女に、僕は手を伸ばした。

「待て!お前達の目的は!そして、名前は!」

その問いに、女は立ち止まり、おもむろに口を開いた。

「目的は…子供を産むこと。今は…あなたの子を産みたい…。そして、名前は…」

女はフッと笑い、

「女…。それ以上の名はないわ」

僕の方を振り返ると、

「でも!あなたになら、女以外の呼び方で呼ばれてもいいわ」

笑顔をつくりながら、その場から消えた。

「女神」

そばにいた男も、僕の方をじっと見つめながら…消えた。

僕は妙な感覚を覚えながら、しばし女がいた空間を見つめてしまった。

「女…と男…」

恐らく…男にも名前はないだろう。

そんなことを考えていると、耳許で声がした。

「あ・か・ほ・し」

アルテミアである。

(忘れていた)

地獄は、今から始まるのだ。

「は、はい!」

背筋を伸ばし、真っ直ぐに立つ僕の前に、怒りの形相のアルテミアが立っていた。

「殺す!」

アルテミアは、渾身の右ストレートをいきなり顔面に叩き込んだ。

しかし、抵抗はできない。

それが、愛するものの弱味である。