「穢らわしい!あのようなものが、人間と呼べるのか!」

城内にある炎の騎士団の陣地に戻ったリンネの苛立ちに、その前で跪くユウリとアイリは、ただ無言だった。

「あんなものが、闊歩する世界は異様よ!」

リンネの体は、彼女の精神状態を表すように、炎のように揺らめいていた。

「確かに、殺す楽しみがないですなあ〜」

ユウリとアイリの後ろに控えていた…炎の騎士団所属の魔神が頷いた。

「我々は、すべてを一瞬で焼き尽くす。故に、それまでの過程が大事」

「下らんな…」

魔神が話している後ろの闇から、誰かが現れた。

「戻っていたのか…」

ユウリが、床に向かって呟くように言った。

闇からしみでたように、現れたのは、刈谷雄大であった。勿論、その名は偽名である。

「貴様が楽しむ過程など関係ない。ただ我々は、すべてを燃やすだけだ」

「グ、グレング!」

馬鹿にされたと思った魔神が顔を上げ、刈谷を睨んだ。

しかし、刈谷は気にすることなく、ユウリとアイリの横まで歩くと、跪いた。

「学校はどうしたの?」

リンネは、学生服姿の刈谷の前まで来ると見下ろした。

「オウパーツの件は、終了致しました。しばらくは、1つになることはないでしょう」

「そう〜」

リンネは、跪く刈谷の後頭部に微笑んだ。

「でも、あの学校は、何かと気になる人物が多いわ。引き続き、監視をお願いね」

口調は優しくても、その身から放つ苛立ちに周りの魔神達は気付いていた。

「誠に、申し訳ございません」

刈谷は跪きながら、さらに頭を下げた。

そして、真っ赤に燃えるリンネの足元に口づけを捧げた。

「勝手に、持ち場を離れたことを…。これは、我の身勝手…。何なりと罰をお与え下さい」

「フン」

リンネは鼻を鳴らすと、刈谷から離れた。

目を瞑り、罰を待つ刈谷を見て、リンネは背を向けた。

「我々の目的は、すべての土地を、ライ様の名において統治すること!」

リンネは、前方を睨み、

「それ以外に、意味はない」

そのまま…マッチが燃え尽きるように消えた。