「赤星…」

アルテミアは、答えない僕の気持ちがわかったのか…自ら、言葉にした。

「お前が…この世界の王になれ。そうすれば…魔物と人間の戦いをなくすことはできないが、少なくすることはできる。王が命じられば、魔神達も無駄な殺戮はしなくなるだろう」

「……成る程」

僕は、アルテミアの言葉を理解した。

「そうだね…。王が、人間の争いを禁じれば…ある程度のことは防げるかもしれない」

そう言うと、僕は…目を閉じた。

アルテミアの母親であるティアナ・アートウッドは、ライに人間という存在を教えたかったのだろう。

彼はティアナを愛し、アルテミアという子供をつくった。

そのまま…幸せが続いたならば、この世界の運命は変わっただろう。

しかし、ティアナは死んだ。

その結果…彼は、愛する者を失う悲しみを知った。

その悲しみは、彼を…人類滅亡へと導いていくことになった。

その理由は、ティアナ・アートウッドを直接殺したのが人間であるということ。そして、愛するという苦しみを与えた人間そのものを憎む心が、彼を狂わしているのだ。

「だけど…」

僕は目を開けた。すると、さっきまで直視できた太陽が眩しいと感じた。

目を細めながら、僕はゆっくりと首を横に振った。

「僕には、相応しくにないよ。アルテミア…。君こそが、王に相応しいよ」

「な」

僕の言葉に、アルテミアは絶句した。

「アルテミア…。君こそが…」

「うるさい!!」

アルテミアは、絶叫した。

「アルテミア!?」

僕はその叫びに驚き、上半身を起き上がらせた。

なぜならば、その声は…ピアスからではなく、真横から聞こえたからだ。

「お、お前は!臆病風に吹かれたのか!」

唇を噛み締めたアルテミアが、立っていた。

昔、僕を鍛えた時のように、気を固めた疑似肉体であろう。

「赤星!お前以外に!誰が、王になる!誰が、魔王と戦える!」

アルテミアの手に、氷でできた長剣が握られた。

「お前しかいない!」

襲いかかってくるアルテミアの長剣を、僕は立ち上がると、ファイアクロウで受け止めた。