「お母様!」

戦いを終えたフレアとコウヤは、森の中で休んでいた。

魔物や猛獣がいる森であるが、魔王軍に所属する程のレベルのものはいない。

命令で襲いかかってくるもの以外は、圧倒的な力の差を感じる相手に近づくことはない。

しかし、気を解放すれば、新手の魔王軍に気づかれるかもしれない。

フレアは気を抑えながらも、周囲に火種をばら蒔いていた。

不用意にこちらに近づけば、灰になるだけだ。

それに、ご丁寧にも、火種に火の匂いをつけていた。

これでは相手に見つけてくれと言ってるようなものだが、野生の魔物達にはこれでよかった。


多分、襲いかかってきても、簡単に倒せるけど…あまり、コウヤに戦わせたくなかった。

その理由は、簡単である。


「お母様!おいしいね!」

フレアのそばで、ドラゴンナイトやタダの死体から血を吸うコウヤ。

ほんの数ヶ月前まで、赤ん坊だったコウヤが、自ら血を吸い、歩き…戦うことをしている。

その成長の早さは、人間ではない。

過酷な状況にいればいる程…コウヤは成長し、強くなっていく。


(彼らの血を吸い…魔力も奪い取っている)

小学生くらいの大きさになっているコウヤの横顔を見ていると、やはり浩一に似ていると思った。


(本当に…似ているだけなのだろうか…)

成長するコウヤを見ているとたまに、胸が苦しくなった。

(浩一…)

フレアは胸元をぎゅっと握り締めると、数秒だけ目を瞑った。

ゆっくりと再び目を開けた時には、フレアの顔は優しい母親の表情になっていた。

「お母様は、食べなくていいの?」

コウヤは、いつも何も口にしないフレアが心配だった。

「あたしは、大丈夫よ」

フレアは、心配してくれるコウヤの優しさが嬉しかった。


フレアは少ししゃがむと、コウヤの視線に目線を合わせた。

「あたしは、あなたの武器だから…ご飯は、必要ないの」


いつもそう言って、食事をとらないフレアに、コウヤは堪らなく心配になっていた。