「どこだ!どこにいる!」

激しく自然を傷付ける無神経な足音に、誰も注意することはできない。

なぜならば、その者達は力ある存在だからだ。


人が気安く立ち入ることの出来ぬ、深い山々の間を翼ある魔物達が飛び回る。

「探せ!探すのじゃ!」

竜の顔に、人間の体を持つドラゴンナイトの群れが、空と森の中を探索していた。

「なぜじゃ!なぜ…気を一つしか感じられんのじゃ!」

緑と土…さらに上には、万年雪。

その三色しかないように見える風景の隙間から、魔物が走り回るのを確認できた。

歳を取ったドラゴンナイトは、隊を指揮しながら、上空より、辺りを伺っていた。

「それも、感じる気は…小動物と変わらん!」

白くなった顎髭を触りながら、ドラゴンナイトは舌打ちした。

見つけたと思っても、野うさぎなどが多い。

「拉致があかんわ!」

上空に浮かぶドラゴンナイトの口が輝き、炎を吐き出そうとする。

「あぶりだすか!」

炎が木々を焼こうとする寸前、森の中から何かが上空に向けて、飛び出してきた。

ドラゴンナイトはニヤリと笑い、

「かかったな!」

首を回すと、真後ろまでジヤンプした者に、口を向けた。

灼熱の炎が、その者の全身を包み、焼き尽くしたはずだった。

「何!」

ドラゴンナイトから放たれる炎を切り裂いて、細くしやなかな足が、ドラゴンナイトの首筋にヒットした。

「うげえ!」

長い首をくの字に曲げ、苦痛の表情を浮かべたドラゴンナイトは、蹴りを放った相手を見た。

「や、やはり…あなたか」

ドラゴンナイトに蹴りを叩き込んだのは、炎を身に纏った…女だった。

「あ、あなたの属性は…炎…!」

ドラゴンナイトの全身の穴から、炎が噴き出し、彼の体が燃え出した。

そして、ゆっくりと森に向かって落ちていくが、木々にぶつかる前に、灰になった。