さよなら、もう一人のわたし (修正前)

 彼は別の子と勘違いしているのではないかと一瞬考えたのだ。

 彼はああ、と口を開く。

「彼女は役名で演じていたからね」

「どんな役名だったんですか?」

「仁科秋。俺が名付けたからよく覚えているよ」

「ええっ」

 あたしは思わず椅子から立ち上がる。

 あたしは仁科秋と千春の姿を比較する。

 似ている気はする。

「本当ですか?」

 あたしが憧れていた彼女が千春だとは考えもしなかったのだ。

「本当だよ」

「あたし、水絵さんと彼女の大ファンだったんです」

 仁科の名前を出したとき、千春が大笑いした理由が分かった。自分の名前を出されると思ってもみなかったのだろう。