さよなら、もう一人のわたし (修正前)

「君の顔を見ていたら分かるよ」

 彼は持っていた脚本をぺらぺらと捲った。

 そして、言葉を続ける。

「千春から聞いていたよ。とてもこの映画を好きな人がいて、彼女にやらせたらどうかってね」

 千春はそんなことまで話をしていたのか。

 何だか恥ずかしくなってきた。

「でもどうしてあたしに」

「千春がどうしてもしたくないからだろう。もう演技はしたくないと言っていたからな」

「もうって千春は素人じゃないんですか?」

 それは彼女が何度も主張していたことだ。