新しい家までは千春が送ってくれた。

 本当はまた父親がしゃしゃり出てこようとしたみたいだったが、それは千春が抑えたらしい。

「お兄ちゃんのことよろしくね。あれでも家事とかは一通りできるし。ちょっと無神経なところもあるけど」

「そんなことないよ」

「でも籍は入れたらだめなんだって?」

「みたいだね。でも、今はそれでもいいよ」

 別に結婚の話があったわけでもないのに、父親に念押しされた。

 きっと一緒に住んだら彼の今まで見えなかった部分も見えてくるだろう。

 でも、それでも彼のことは好きでいられそうな気がした。

 彼と一生を歩むと決めたときは、今以上に彼のことを好きになれたら。

 そう思っていたのだ。