さよなら、もう一人のわたし (修正前)

 でも、そんな言葉とは裏腹に彼女の目が涙ぐんでいるのが分かった。

 あたしはこの場にいないほうがいいのかもしれない。

 彼女の目を見ていると、そう思ったのだ。

「無関係じゃないよ。娘もいる」

 立ち去ろうとしたあたしの耳に届いた言葉。

 そんな言葉が妙に新鮮でくすぐったかった。

 彼からそんな言葉が聞けるとは思わなかったからだ。

「それに無理をしないでほしいから」

 あたしは二人の姿をもう一度見ると、そのまま部屋を出た。

 そして、アパートの前に停まっている車に乗り込んだ。

 あたしを見て、木下さんは優しく微笑んだ。

 彼女はあたしにハンカチを差し出した。

「ハンカチなんて」

 そう言ってあたしは自分の頬に手を当てた。

 あたしはそのとき、自分の目から涙が溢れているのに気づいた。