「でも、君も複雑だよね」

 あたしは頷いた。

 あたしの親の話を彼にはすませていたのだ。

 だから、あたしが彼の娘だということも知っている。

 彼は驚いていたが、あたしの話を黙って聞いてくれた。 

「君が続けていこうと主なら僕の何倍もその覚悟が必要なのかもしれないね」

「嫌な世の中だよね」

 あたしは苦笑いを浮かべていた。

「尚志さんにも言われたから。つきあえない理由の一つに、尚志さんが脚本家の息子だからって」

「彼なりに君の幸せを願っているからそう言ったのだと思うよ。彼は君の夢の足かせにしかならない」

 きつい言い方だけど、それは当たっていた。

 そして、その中傷は全ての人を巻き込む。

 あたしの母だけではない。父親ももしかすると、千春や、尚志さんまでも。