さよなら、もう一人のわたし (修正前)

 彼女が動き、何かを言うだけで彼女の世界に引き込まれる。引き込まれるというよりは引きずり込まれるように強引なものだった。

 そんな印象を持った。

 それが彼女の伯父の言う「才能」なのかもしれない。

「でも別に興味がないことに才能があると言われても困るでしょう?」

「確かにそうかもしれないね」

 あたしからするともったいなくて羨ましいものだった。しかし、千春にとってはそうではないのだろう。

 あたしも別の何かの才能があると言われても困ってしまうかもしれない。彼女はそんな気持ちなのだろう。

「でね、伯父が誰か適役がいたらかまわないって言うのよ」

「適役ね。心当たりはあるの?」

 千春が細い指をあたしに向ける。