さよなら、もう一人のわたし （修正前）

「どうだろうな。でも、そんなことは言えないから。でも、夢だったみたいだから、それを俺が止めろなんて言えないし、そういったことを理解してくれる人とつきあうのがいいいと思うから」

　あたしの胸がどくんと鳴った。

　ずっと気づかなかった。

　だから彼はあたしを嫌いだと言ったのだ。

　あんな蔑んだ目までして。

「俺って最低だからさ」

　あのとき、彼が蔑んでいたのはあたしではない。

　彼自身だと悟った。

　あたしを受け入れられない自分の弱さを気にして、彼は苦しんでいたのだろうか。

　あたしは何も言えない気持ちになった。

「でも、どうせあなたのことだから、その辺りのことも上手く言えずに、彼女に暴言吐いたりしてそう」

「どうしてそんなことまで分かるんだよ」

「あ、そうなんだ。半分冗談なんだけど、かなり」

　彼女は尚志さんを見ると、苦笑いを浮かべていた。