さよなら、もう一人のわたし （修正前）

　彼女はあたしから目をそらすと、優しく微笑んだ。

　無理に言わなくていい。彼女がそう言ってくれているような気がしたのだ。

「伯父さんが写真を持っていたの」

「誰の？」

「あなたのお母さんの。京香のお母さんがおじさんの傍を去ったでしょう？　

その後、あたしは仕事のとき、伯父さんの家で京香のお母さんの写真を見つけた。京香を始めて見たときに、彼女のことを思い出したの」

　あたしの心臓がどくんと鳴った。

「千春、知っていたの？」

　彼女は頷いた。

「黙っていてごめんね」

　あたしは首を横に振る。

「そんなに似ていた？」

　千春は頷く。

「あたしはさっき、あなたの演技を見たって言った。でも、その前にあなたを見て、あなたのお母さんのことを思い出して、それであなたに興味を持ったの。

演技を見ていけるかもしれないとも思った。

でも、心のどこかで伯父さんに一度会ってほしいって思っていたのも本当なの」

　それが千春が初対面だったあたしに、映画の主演という甘い話を持ち出してきた理由なのだろうか。

　それが理由なら全て納得ができる。