さよなら、もう一人のわたし (修正前)

「これでいいだろう?」

 あたしは唇を噛み締める。

 好きでもない相手とキスをしたりするあたしを皮肉ったのだろう。



 彼なりに。

 あたしの目から涙が溢れそうになる。

 始めてするキスは幸せなものだと思った。相手から愛されて、それを確認するための行為。そう思っていたのだ。

 それも彼からされたキスだった。

 それなのに彼としたキスはあたしの心をしめつける。

 それは彼の気持ちがあたしにはなかったから。

 あたしはそのまま部屋を出て行こうとした。

 尚志さんがもう一度あたしを後ろから抱き寄せた。