あたしは首を横に振る。

 彼がどんな風にあたしのことを説明したのかは気になるけど。

 それがあたしがこの仕事に就きたいと思った原点だったのだ。

 自分がやっていけるとか、よく見せようとか、そんなことは大事じゃない。

 ただ、今は、この映画を見てくれる人のために、できる限りのことはしたいと考えてたのだ。




 撮影は順調に進んでいった。迷いはあった。

 でもあたしは今、彼女を演じることに徹したらいいのだ。それが分かったからだと思う。