さよなら、もう一人のわたし (修正前)

 あたしは何も言えなかった。

「でも、彼女はあんなに輝いていて」

「それは彼女のために書かれたこの脚本と、監督の腕があったから。

彼女自身もこの役に入れ込みすぎて、気が抜けたというか彼女以外を演じられなくなってしまったのかもしれないってね」

 木下さんは首を横に振る。

「私には正直分からない。そこまでしてどうして人の前に立ちたいのか。でも、それは私がずっと影の存在でしかなかったからそう思うのでしょうね」

 そこで息を吐く。そしてことばを続けた。

「結局推測でしかない。きっと誰も彼女の本心は分からないままよ。もしかすると千春を適職につかせたいという親心だったのかもしれないけれど」

 彼女は首を横に振る。