さよなら、もう一人のわたし (修正前)

 彼の父親は口をゆっくりと開いた。

「本当に悪かったと思っているよ。お前たちに迷惑をかけて。これからはもうどこにも行かないから」

 彼は唇を噛み締める。

「俺はいいよ。もう一人でやっていける。でもそれは千春に言ってやってくれ」

「今まで悪かったな」

 たまに笑うけれどあまり自分の本心を口にしない人なのだと思っていた。

 彼でもそうやって自分の気持ちを露にするのだと気づく。

 それだけ彼にとって特別な存在だったのだろうか。

 父親や千春の存在が。

「それで千春は?」

「電車に乗り遅れて、もう直ぐ来るって」

 尚志さんが自分の父親から目をそらした。

 彼の視線が窓の外に向けられる。

 あたしは唇を噛み締めていた。