さよなら、もう一人のわたし (修正前)

 ずっと相手がいなかったとは思えない。

「あたしも料理がそこそこ得意なんですよ」

「そんな感じはするよ。杉田君が君の家でよく食事をご馳走になっていたらしいね」

「杉田さんから聞いたんですか?」

「そうだよ。千春もそれっぽいことは言っていたかな」

 あたしは想像をして、表情を綻ばせる。

 もし、母親と彼が結婚をしていたら、父親の手料理を楽しむことがあったのだろうか。

 想像できないけれど、今の彼が父親なら楽しいと思ったかもしれない。

「お皿、出しますね」

 あたしは食器棚に入っているお皿を確認した。

 これは全部成宮監督が洗っていた。

 手伝おうかと言ったら、彼は手伝わなくていいと言っていたのだ。

 だから、あたしは部屋でくつろいでいた。

「キャベツとかいるのか?」