あたしは母親のことを思い出す。

 彼女はあたしに洋服を買ってくれたりしていた。

 でも彼女はここ数年、同じような洋服を着ていた。

 それは彼女が自分に使うお金をあたしに使っていてくれていた証拠だった。

 あたしは自分で稼いだお金で何を一番に買いたいか分かった気がした。

「あたし、お母さんにお世話になったから、お母さんに洋服を買ってあげたいなと思っています」

 別に彼に言う必要はなかったのかもしれない。

 でも、言葉が自然にこぼれていた。

 言ってから気づいた。

 彼の前で母親の話を出すなんてどうにかしている。

「きっと彼女は喜んでくれるよ」

 彼はそう言うと、嬉しそうな表情を浮かべていた。