「いいんじゃない?」

 そう言ったのは杉田さんだった。

 彼の手には今ジャガイモが握られている。

 彼はあたしが何度もしつこく言ったこともあり、自炊をするようになっていた。

 あたしはお節介と思いつつ、彼に料理を教えていたのだ。

 今日はちょうどその日だったのだ。

 たまにあたしの家に食べに来たりもする。

 母親も杉田さんのことは快く思っていたのか歓迎しているように見えた。

 できるだけ体調管理などをしっかりしてほしかったからだ。

「でも名前負けしそう。杉田さんはどうするの?

「杉村康」

「そのまんまだね」

「少し違うけど、どうせなら昔と同じがいいかなと思っていて」

 あたしはなぜ千春が彼のことを康ちゃんと呼んでいるか、その理由が分かった気がした。




 夏すぎには彼は簡単な料理なら一人でできるようになっていた。

 あたしは彼を見ると肩をすくめていた。