さよなら、もう一人のわたし (修正前)

「聞きたいことあるなら聞くよ?」

 彼はあたしを見て微笑んだ。

 あたしは思わず顔を背けた。

「この家にはビデオがたくさんありますね」

 あたしは自分の胸が高鳴るのを自覚しながらそう言った。

「ダビング機能のあるDVDを買ったけど、ダビングするのって面倒だろう? だからそのまま放置していてさ」

「は?」

 あたしはまさかそんな返事が返ってくるとは思わずに彼を見た。

「変なこと言った?」

 彼はあたしの反応に困ったみたいだった。

 彼は天然なのだろうか。

 千春がやけにしっかりしている意味が分かった気がする。

「飲み物でも出すよ。コーヒーでいい?」

 彼はそう言うと、カウンターキッチンの中に入る。