【森川 恭平】



鳴り続ける携帯に表示されていたのは、恭平の名前。



俺は一度溜め息をついた後、通話ボタンを押した。



「もしもし?」



『一真〜!今日どうだった?あれから進歩した?』



…………



「何もねぇよ。」



『はぁあ!?俺がせっかく気ぃ遣って帰ってやったって言うのに…何やってんだよ、バカ一真!!』



電話の向こうで騒ぐ恭平。



「うるせぇな…」



『とにかく!お前らにはくっついてもらう方が俺としては安心なの!!』



なんだよ…それ。



「はいはい…わかった。」



気乗りはしない。



けど…
やってみようか─



俺は兄貴の恋愛を見て、安易に人と付き合うのは絶対にダメだと思っていた。



正直…
それだけだ。



自分自身は一回も女と付き合ったことなんてない。



こういうことを、試しとか実験って言うのは変だけど…



せっかく藤村は俺を好きでいてくれてる訳だし、俺も今はまだでもいつかはきっと…



『好き』だと言える日が来るのかもしれない。



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