私が聞くと、先生は視線を反らして唇を噛んだ。



返答は…なし。
でも、私は続けた。



「私には…先生の全部が嘘だったとは思えません。ほんの少しでも、真実があったと思うんです。」



信じたい。



たとえ大部分が嘘だったとしても、どこかに先生の本当の姿があったはず…



そうだよね?






「…俺は全部嘘だ。真実なんてどこにもない─」



だから、先生の返答を聞いた私は呆然とした。



そんなことって…



「自分以外の人間は全て敵。信じたら負け…そう思って生きてきた。」



え…?
先生の表情が少し曇る。



「今回は特例だ。別にお前を信じた訳じゃない…」



どういうこと?



「先生…」



「これが俺の本来の姿だから。もし誰かに言うとかするのなら、好きにしろ。それはお前の自由だ。」



最後にそう言い残すと、先生は屋上から出て行った─