そう言うと、篠原は悲しそうに下を向いた。



そして…



「先生、そんなこと言わないで…寂し過ぎるよ─」



どうも篠原といると、俺は調子が崩されるようだ。



篠原はただの生徒だぞ?
俺は…何て言った?



『人の狡さ』



確かに俺は、そのことについて身を持って知った。



でも…
言う必要はないだろ─



美久にも、あのことはまだちゃんと話していない。



なのに、俺と一切の関係もない篠原に言いかけた…



どうして?



「私は何も知らない。でも…先生には笑ってて欲しいんです。…勝手だけど、そんな悲しそうな先生は見たくないんです…!」



なんでだよ…?



俺の目を真っ直ぐに見て、視線を反らそうとしない篠原の目には…



涙が溢れていた─