「…何やってんだろ。」



電話を切った後、閉じた携帯を見つめて呟いた。






一真は…
もう遠くへ行った。



闇に慣れた私の目には眩し過ぎるであろう、光溢れる世界へ─



しかもそれは、自らが行かせた世界でもある。



「皮肉よね…」



もし一真の背中を押す前にこの想いに気付いていたとしても、私は同じ行動を取ったと思う。



やっと光が宿った彼の目を、もう一度闇に染めるなんてことは出来ないから…



「結局、そうなるのよね。行き着く先は同じ…か。」



私はこの世界にいる以上、本気で恋なんてしない。



携帯をベットに放り投げ、私は1つため息を漏らした。






『会いたい』なんて、贅沢な願いは言わない。



その代わり…
連絡先は消さない。



もしまた、彼の声が聞けるなら、それだけでいいような気がするから─