次の日─



「……藤原 冬嗣が蔵人頭に任命され、娘の順子を……」



今は日本史の時間。
担当は杉田先生。



昨日のことがまだ気になったままの私は、少し複雑な気持ちだった。



黒板には、読みやすい綺麗な字が書いてある。



左手に教科書、右手にチョークを持った杉田先生は黒板の前に立ち、文字を書く。



「冬嗣は天皇と外戚関係を成立させ、これが藤原氏北家の発展に繋がっていく。次に良房は…」



杉田先生の低い声が、静かな教室に響き渡る。



窓際の後ろから二番目の席にいる悠哉は、既に机に顔を伏して寝ていた。



全く…バカなんだから─



「……中津、寝るな。」



そんな悠哉を見つけ、杉田先生は出席簿を持って悠哉の席の近くまで行き、頭を叩いた。



叩かれて起きた悠哉は、杉田先生を見て大きなあくびをした。



失礼でしょ…