「やっと退院だね。」



それから数日後…



俺は予定よりも結構早く、退院の日を迎えた。



「まぁな…病人でいるのも、悪くなかったけど。」



元恋人に刺されたなんてことは学校側には言えず、表向きは体調を崩しただけということになっている。



明日は…学校行かないと。
冬休み中だけど─



「先生、準備出来た?」



早く行こうと言って、俺の腕を引っ張る希。



少し前、俺のことを『一真』と呼んだ希だが…



それはあの時だけで、以来一度も聞いていない。



俺はもう『希』と呼ぶことに慣れてしまったのに…



「そんなに急ぐなよ…」



「早く〜!!」



荷物をまとめ終わるとすぐに、俺は希に手首を掴まれて、引っ張られながら病室を出た。