今、俺が愛しいと思うのは葉月ではなく篠原だ。



でも、堂々とは言えない。



こうやって篠原が目の前にいても、俺は何も伝えられなくて…



何か言いたそうにしている篠原に、俺は何を思ったのか自分のメガネをかけた。



『見えない』と言いながら目の辺りを触る篠原を見て、俺は少し笑った。



久しぶり…だよな?
少しでも心から笑ったのは─



見えないならメガネを外せばいいのに、なかなか外そうとしない篠原は、見てて結構面白かった。






「やっぱり…無理です。」



メガネのゴタゴタが終わった後、話を戻した俺に、篠原はこう言った。



無理…?



「どうして?」



今は気持ちを胸の中にしまい込み、出来るだけ普通に尋ねてみた。



何が言いたいんだ…?



「だって…っ!!先生は私にとって、遠い人…だから。絶対…、迷惑かかるから…」



そう言って、篠原はまた俯いてしまった。



メガネがあるから見える。



篠原は…
泣いていた─