小さい頃から、遠くのものが見えることが自慢。



でも、その視力のせいで私は嫌な光景を見ちゃった…



先生と葉月さんが、校門の前で話をしている光景─



あの時は正直、胸が苦しくってたまらなかった。



見たくない…
なのに、目は反らせなくて。



先生が、なんだかすごく遠くに感じたんだ…



「…篠原?」



「いえ……、です。」



「え?」



今はこんなに近くにいても、やっぱり遠い存在。



手を伸ばしても…
多分、きっと、届かない。



「私…っ─」



もうわからない。



私の胸の中に秘めた気持ちは、どんどん大きくなる。



けど…
伝えたら、戻れない。



先生だって、迷惑だと思うに違いないんだから…



「篠原…」



「はい?……うわっ!」



先生に名前を呼ばれ、俯いていた顔を上げると、急に視界がぼやけた。



あれ…?
顔に何かついてる…



「言いたいこと…あるなら言えよ。俺、ちゃんと聞くから─」



目の辺りを触ると、そこにはメガネらしきものが…