「ほら、希。先生にお礼言いなさい。」



そんな…
大したことしてないし。



「あ、ありがとうございました…」



篠原はそう言うと、俺の方を一瞬見てまた下を向いた。



「じゃあ、僕はこれで。篠原、また明日な。」



「はい…さよなら。」









自分のことを『僕』って言うのは、正直嫌だ。



普段言わないからか─
なんだか気持ち悪い。






篠原の家からの帰り道、今日の俺は、自分らしからぬ行動をしたな…と思っていた。



過去を話したり、手を繋いだり、家まで送ったり…



挙げ句の果てに、生徒の前で泣くなんてこと─



訳わかんねぇ…



♪〜♪〜♪〜



そんなことを考えていると、ポケットの中の携帯が鳴り出した。



「…………」



知らない番号。



怪しいと思った俺は、電話に出ずにそのまま放置した。



なんとなく…
想像はつくような気が─






鳴り止むのを待ち、俺は『ある人』に電話をかけた。