「靴箱に珍しいものでも入ってんの?」

「あっ……」

今、一番顔を合わせたくない人ほど顔を合わせるのは、やっぱり神様の悪戯なのかな?

「酷いことされているね、これが初めてじゃないよね?」

「ちょっと、人の靴勝手に触らないでよ!」

「どいて」

ポケットからカッターかを取り出して、くっ付いた靴をゆっくりと切り離している。

何でそんなもの持ち歩いてるの?

「お前もイジメられているんなら、護身用に一つぐらい持っておけよ」

あぁ、護身用ね。だけど、そこまでする必要もない気がする

「あ、ありがと」

なんか、悔しいな。コイツに助けられてばっかり。面と向かって言うのは酌にさわるからソッポを向いた。

「あれ~、そんな態度取っていいの? これもう一回貼り付けちゃおうっかなぁ」

「それは、困る」

この悪魔

「送るよ」

「いい、一人で帰れるから。靴ありがとう」

靴を履いて帰る気分にもなれず、スクールバッグに靴を入れそのまま彼に背を向けたら、今度は後ろから抱きつかれた。

「離してよ」
 
「離さないよ。やっと会えたんだから」

「何よ!! 勝手に引っ越しちゃったのはそっちじゃない! こんなに変わり果てた姿になっちゃってさ、私が好きだったのはサラサラの黒髪で純真なヒカルなの!!」

「やっぱり好きでいてくれたんだ、ありがとう」

なんか、今勢いで変なこと言っちゃったな

「もう、昔のことよ」

「俺は現在進行形だけど?」

「好きにすれば」

半ばヤケクソに答えたのに、ヒカルは本当に好きにしだした。

背中に覆い被せていた躰が離れホッとしたのも束の間、すっと躰が宙に浮く感じがした。

正確には、ヒカルにお姫様抱っこをされている?

「いや、ちょっと、手……離して、下ろして!!」

  ズドン

「いった~い!!」

「離せって言っただろ?」

そんなに急に手を離さなくても……

コイツ、絶対私でからかっているよ。