― 放課後

「甘奈、良かったわね♪」

「よくないよ」

「願いが叶ったんでしょ?」

あぁ、若き乙女の思い出を杏ちゃんに語らなければ良かった。でも、彼女だけなの、私の心を癒してくれるのは。

「杏ちゃん、今日お泊りしていい?」

「ごめん、今日はピアノのお稽古なの」

「そっか」

天使たちは私から安らぎの場を奪い、お空へと舞い上がっていく姿が目に浮かんできた。

「今度、一緒にレモンケーキ作ろうよ」

「うん♪」

彼女の優しさを感じ、ウキウキモードに変換された私って厳禁かな? 

だけどそれもつかの間、玄関口に来て大変なことに気がついた。

靴の底が靴箱の中にくっ付いていて離れない。

根性悪いのもいい加減にして欲しいわ。

こんなことを杏ちゃんに言ったりして、彼女が狙われたら困る。

「杏ちゃん、私忘れ物しちゃったみたい、先帰ってて」

「気をつけてね」

「杏ちゃんもね」

どうしよう。どうやって帰ろう……